「うわぁ、虹だ!」
葛っちゃんは、思わず叫んでしまいました。
駅の屋根のうえに、おおきな虹がかかっていたのです。
七つの色がとても鮮やかで、
駅の屋根に登って、そこからヒョイっと虹にのっかれば、
ほんとうに向こう側に渡れそうな感じがします。
うちを出るときはたくさん降っていた雨も、
いつの間にかパラパラと小降りになっていました。
駅に出入りする人たちの様子も、雨に濡れたしょんぼりした感じから
ざわざわとして、にぎやかな感じに変わっていきます。
駅前の広場の満開の桜も、みんななんだかうれしそう。
花びらに乗っかった雨粒に西日がさして、キラキラと輝いています。
雨で散ってしまった花びらも、石畳に降りつもって、
広場はまるでピンクの雪景色みたいです。
「でも、雨がやんじゃったら、ちょっとくやしいな。
せっかくお父さんに、傘、持ってきたのに…。」
葛っちゃんは、うれしいような、残念なような、ちょっとややこしい気持ちで、
お父さんの乗った電車が着くのを待っていました。